2016年7月19日火曜日

動かない武術

中国武術というと激しい動きを連想するかもしれないが、
その中でも動かない武術もある。

私の知る限りでは、意拳、太極拳、心意拳、詠春拳など。

動かないで思い出したが、
先日の伝統大会において詠春拳で出場されている方がおられた。
広いコートのど真ん中に立ち、一歩も動かずひたすら手型技を披露された。
私はその方の心意気と勇気に心を打たれた。

なぜなら、伝統大会と言えど、コートいっぱいに大きく動いた方が高得点が得られる。

走り回ったり、
無数の拳を打ち出したり、
飛んだり、
回ったり、
片足や低い姿勢でピタリと静止したり。

要するに派手さが評価される。
なので入賞された選手の方々の演武はアクションスターさながら華やかそのもの。

確かに私も派手な武術に憧れたことはあるが、
これらはいわゆる無酸素運動。
わずか1~2分でも急激に心拍数が上がり、呼吸が激しくなる。
体力の消耗も激しく、長時間動くことは出来ない。

約40年間ほどんど運動らしいこともせず、小児喘息で体力もなく
その上、肝機能も弱いからお酒もほとんど飲めないし、とにかく疲れやすい。

だから太極拳を選んだ。

「動」と「静」に分けるなら「静」の武術。

これが実に気持ちいい。
動きがゆっくり静かなので表演の世界で目立つことはないかもしれないが、
有酸素運動だからいつまでも動くことが出来るし、動けば動くほど気持ち良くなる。
しかも有酸素運動は脂肪燃焼率が高いからどんどん痩せる。

最近「静」の鍛練を行うようになって私はどうやら痩せたようだ。
半年ぶり、一年ぶりに会う人会う人に「痩せた?」と聞かれる。

そんなことはともかく、
昨夜は、サークルで双辺太極拳をじっくり練った。
改めてその気持ち良さに感動した。
やっぱり私が求めているのはこれだと。

そして、帰宅し五行拳も行ったが、
ほとんど動かず、しかもゆっくり、
意識の働きによって気がどう流れるかを感じながら打つ。

打つと言っても、打ってはいない。
意を打つ。

これもまた最高に気持ちいい。
緩めば緩むほど強くなる内家拳。

気持ちよく行いながら、スリムな体型になり、しかも強く美しくなれる太極拳と形意拳は本当に素晴らしい。

形意拳といっても表演用の形意拳とは全く違う。
というより、私としてはどんどん剛拳化している形意拳をみていて嘆かわしくなる。

形意拳もまた静なる武術。
激しく動き回る武術ではない。

少なくとも私は先日の伝統大会で、形意拳の演武をやり終えた後呼吸が乱れることはなかった。
残念ながら高い点数を頂くことは出来なかったが、自分らしい演武が出来てとても満足している。