2020年11月21日土曜日

「見る」より「感じる」

太極拳は健康体操?

そう思っている方が多いようですね。

しかし私は違いました。
最初から神秘的な技を使う武術だと思っていたので、
太極拳を始める時はとてもドキドキワクワクしていました。

なぜ武術だと思っていたのかはわかりませんが、学生時代なんらかの資料でそれらしいものを見たのかもしれません。

そしてそれは的中しました。
はじめて出会った師は筋金入りの武道家だったからです。

準備運動を終えた後、全員で陽式太極拳の型を通すわけですが、先生、先輩方と一緒に動きながら、今までに見たこともない不思議な動きにワクワクし、同時にこんな踊りのような動きで一体どうやって技をかけるのか??
そのギャップに強烈な興味を抱きました。

型を通した後は個別に指導していただけるのですが、その時間がとても好きでした。
毎回ひとつずつ新しい技を覚えるのが楽しくて楽しくて夢中になっていました。
そして時折「この技ってどうやって使うんですか?」という質問に師は快く答えて下さり、実際にその技を肌で感じさせてくださいました。

今でも一番強烈に印象が残っているのが玉女穿梭(ぎょくじょせんさ)です。
名称の意味は「機を織る美人」という意味になるらしいですが、確かに動きがそれらしく美しいです。
しかし技はそんなイメージをぶち壊してくれます。

師に対し打ち出した拳が、ふわっと空を舞い、気が付けば師は私の側面に。
次の瞬間横腹を打たれ、そのまま床に崩れてしまいました。
のれんをくぐったらいきなりオバケが出てきたかのように、ゾっとしました。

この体験談は今までに何度も書いてきたかと思いますが、今回なぜこの話を出したかといいますと、
太極拳は動画では絶対学べないということを伝えたかったからです。

当時と異なり今は、書籍やDVDも豊富ですし、動画サイトでは無料でそれらを見ることもできる便利な時代になりました。

ここでお尋ねしたいことは、
「そのことに安心していませんか?」ということです。

これらを読んだり見たりすることで、自分が出来るようになったと錯覚してしまうということです。

料理本や料理番組をどれだけ見ても、実際に食べてみなければその味は決して解りません。

太極拳も同じです。
活字や動画の世界とは全く違います。

技の掛け合いにしても、弱く打った時と強く打った時とでは技の掛かりが全然違います。
強く打てば打つほど、強く技が掛かりそのダメージは大きくなります。

最近ではスマホなどの普及で、その場で写真を撮ったり動画を撮ったりすることもできます。
どうしても動きを覚えられない時は、動画を撮らせてあげるようにしています。
しかしすぐにはそうしません。

理由は簡単です。
簡単に与えてしまうとそのものの価値が下がり本人も無意識にその動画の価値を下げてしまうからです。
帰ってからその動画を観ながら練習する人がどれだけいるでしょう?

写真にしても同じです。
ボードに書いたことをすぐにメモに取る人、写メを撮る人、何もしない人がいます。
結果は順番通りです。

太極拳はアナログのように見えますが、細かく分析していくとデジタルになります。
1と0、即ち陰と陽になります。

しかしそのデジタル太極拳をデジタルで覚えようとしても無理です。
どこまでもアナログスタイルで覚えるのが最速方法です。

「見る」より「感じる」
やはりこれが最強です。