私の口癖。
「簡単でしょ」
サークルで指導している時、頻繁に口にする言葉。
これは私が勝手に思っていることだが、元々とてもシンプルだった太極拳が時代の流れと共に多くの人に親しまれるようになり、それに伴い指導者も増え、その結果非常に複雑化してきたように思う。
情報が多すぎるのだ。
たった一つの動作でも、あまりにも気にかけないといけないことが多すぎる。
それを気にして動こうとすると頭がついていかず、身動きとれなくなり挙句体中に力みが入ってしまう。
ガチガチの状態で、これが健康的と言えるだろうか?
美しいと言えるだろうか?
はたまたこれで戦えるのだろうか?
一度、白紙に戻してみよう。
頭をからっぽにし、本能に身を任せる。
すると実は太極拳がとてもカンタンであるということに気づく。
私の師匠は、弟子に套路を教えない。
ただついて真似るしかない。
だが、真似ているだけでも自然と覚えることができる。
いや、むしろいろいろ説明されない方が師匠から出ている空気を感じることが出来る。
その空気こそ太極拳で一番大事なことではないかと思う。
太極拳の技は早く動けばとても簡単な動作だ。
相手を倒そうとすれば、姿勢や動作、細かな注意点など気にしなくとも、自然と出来ていたりする。
太極拳は喧嘩するための武術ではない。
自分の身を守るための武術だ。
いつ、どんな災難に遭っても、老若男女問わず自分で自分の身を守ることのできるすぐれた護身用武術。
その上、健康、美容効果もすこぶる高いから願ったり叶ったり。
しかも曲線を描く動きだから、見た目もとても美しい。
美しくしようとしなくとも、美しいのだ。
見ているものを魅了する不思議な力がある。
これだけのことが得られる太極拳。
まったく難しくはない。
多すぎる情報に惑わされないよう。
私も、会員さんになんとか覚えてもらおうとついつい言葉数が増えてしまう傾向があるが、これからは言葉数を減らして行こうと思う。
情報の迷子にならないよう。
そして太極拳を心底楽しんでもらえるよう。