2022年4月20日水曜日

子宮力と丹田

今日は午前クラスとプライベートレッスン2つ。
毎日朝から晩まで太極拳稽古です。

午前クラスでは十字手の技を練習したのですが、
「套路のどこの部分なんですか?」という質問があったので
その場で実践しました。
技は套路通りのものもあればそうでないのもあります。

因みに技が解らない理由のひとつは「手で技を掛けている」と思ってしまうからです。

手はあくまでも接点に過ぎません。
技を掛けているのは足であり体幹です。

そして、エネルギー発生源は腕の筋肉ではなく丹田です。

丹田が位置する部分はいわゆる子宮の位置。
出産経験のある女性ならすぐにピンと来るはずです。

丹田を意識出来るようになると、丹田を中心に体がパンパンに張り詰める感覚が得られます。
これが丹田力です。

「そんなものあるわけがない!嘘だ!」
という輩もいるでしょう。

しかし不思議ですね。
か細い女性の腕で自分より大きな男性を捻り上げることが出来るのは何故でしょう?
その腕で私は何度も腕をへし折られそうになりました。

因みに私の腕も細いです。
自慢ではないですが、高校時代から腕立て伏せや筋トレをしたことが全くありません。

会員さんに私の腕を触ってもらうと、その細さにびっくりされます。
しかしこの細い腕で、自分よりも大きな男性の動きを制することが出来ます。
不思議ですよね?

腕力は腕の太さに比例すると言いますが、
この現象をどう説明出来るでしょう?

見えないものを信じないのは別に構いません。
人それぞれですから。
しかし実際に体験すればどんなに優れた頭脳を持っている人であってもその謎を解くことは出来ないでしょう。

解らないことをあり得ないと考えるのは知識だけに頼っている証拠です。

話をちょっと戻します。

初心者がよくやってしまうのが、膝から動いてしまうことです。
手と足のバラバラで、どうしても膝が先に出てしまいます。
理由は簡単です。
人間は本能的にどうしても楽な方へと流されてしまうからです。

ゆっくり動こうとすると足が辛いです。
その辛さから逃げたいあまり体重をすぐに前に移してしまうのです。

先輩方が套路を気持ち良さそうに練っているのは、
その痛みを乗り越えたからこその気持ち良さなのです。
本当の気持ち良さとはそういうものではないでしょうか?

因みに私は未だに苦痛を求めようとします。
足を前に出す時、すぐには足を床に置かずしばらく宙に浮かすようにしています。
こんな風にして毎回套路を練るたびに軸と内筋を鍛えています。

套路を練る時は、
「さあ!体を鍛えよう!」と思ってとりかかりましょう。
太極拳でなければ鍛えることが出来ない力を得ることが出来ます。



2022年4月18日月曜日

暮らしに活かせる勁力

今日は午前、自由練習会、午後は推手会、その後は気功試験、
そしてプライベートレッスン2つ。
朝から日没まで。
天気も良く気持ちのいい稽古日和でした。

自由練習会は本来、指導者立ち合いの自習稽古ですが、
今日は全員受検者でしたので合格祈願を込めて時間一杯指導しました。

推手会への参加者はM子さん一人のみ。
今の時期様々な用事が重なるのでしょうが、
そんな中でもなんとか時間を作って参加するM子さんには特別トレーニング。

当会が目指すのは演武力ではなく勁力です。
推手なくして勁力は決して身に付きません。

M子さんが料理でかき混ぜをする時、丹田を使ってみたら「こんなにラクにできるとは!」と驚いたそうです。
こんな風にムダな力を使っている場面は稽古だけでなく生活でもいたるところにあります。

演武力と異なり勁力は生活に活かせるのです。
この思いは師から伝わったもので、私自身もこれを伝えていかなければと思い今日に至ります。

プライベートレッスンでは現在オンラインレッスンで双辺太極拳稽古中のEさんですが、今日はオフラインレッスンで稽古しました。
技の用法や勁の使い方などをレクチャー。
年に何度か関東から稽古に参加されるというとても熱心な会員さんですが、私が教えることを「私だけの宝物」と言ってくれたことがとても嬉しかったです。

人と人との記憶は最後に会ったその日の記憶で止まってしまいます。
その後、努力を続けた人と普通に生活している人とでは雲電の差が出ます。

とある交流会である人と1年ぶりに手合わせした時、わずか1年で驚くほど腕を磨いた人がいましたがこの時は本当に驚いたものです。
「腕上げましたね」というとご本人も満足そうな笑みをみせてくれました。
努力する人は本当にカッコいいです。

私も進化し続ける人でありたいと思うし、
昨日の自分より今日の自分と言える自分になりたいと思います。



2022年4月16日土曜日

学ぶ吸収力、溶かす吸収力

昨夜は中級クラスと深夜プライベートレッスンでした。

中級クラスでは楊式太極拳と八卦掌、そして推手をやりました。

今回初めてでしょうか?
自由推手をやってみました。

自由推手では手も足も自由に使ってよく、態勢を崩さないようにするための練習方法です。
今回はじめてということもあり、
足が自由に使えるのにいつもの癖で手で処理しようとしてしまいがちでしたが、
とても良い練習になったと思います。

推手で「粘り付く」ことを身に付け、
自由推手では「足を使う」ことを覚えます。

話は変わるようですが、
覚えが早い人は他の人と何が違うのでしょう?

それは吸収力です。
学ぼうとする心です。

意欲的な人はスポンジのようにやわらかく水をたっぷり吸収します。
そうでない人は石のようでほとんど何も吸収できません。
昔、頑固な人を石頭と言いましたが、本当にその通りだと思います。

学びに来ているはずなのに、
何故か自分でやろうとしてしまったり、
反抗してしまったり・・
実に勿体ないです。

私が師に稽古をつけて頂く時、
道場に入るやいなや「さあ、出来る限り吸収するぞ!」という気持ちで稽古に挑みます。
1分たりとも時間を無駄にしたくありません。

太極拳で大事なことは、
「学ぶ」ための吸収力と、
「相手の力を溶かすため」の吸収力です。

深夜レッスンではUさんの動きが変わりました。

先日のレッスンでUさんの伸び悩む理由が解ったのです。
それは忙しさのあまりほとんど稽古に参加出来ていないからというものでした。

稽古では毎回全套路を通します。
その時に指導者からどれだけ動きを盗めるか?ということになりますが、
その機会がなかったからです。
前回一緒に全套路通したら、その後のUさんの動きが変わりました。

「なんとなく稽古に参加してる」
「先生の動きを見ていない」

とても勿体ないと思います。

大事なことは
「時間を掛けること」ではなく
「時間を大切にすること」ではないでしょうか?









2022年4月6日水曜日

心が勁を生み出す

今日は午前稽古と、プライベートレッスン2つでした。

太極拳を始めたばかりの頃、誰もが思うことだと思いますが
「思ったより難しい」です。

ゆっくりだから簡単そうにみえますよね?
ところが太極拳の動きに直線はありません。
真っすぐのように見えても必ず円の動きが存在します。

先生についていけているはずだと思っていたのに、
いつのまにか手の裏表が逆になっていたり、
左右の足が違っていたり・・
何度も経験あるでしょう。

しかし、なぜそうなるのでしょう?

答えは簡単です。
簡単に解ってしまったら太極拳ではなくなってしまうからです。

力を使わないで闘う武術。
そこにはちょっとしたトリッキーな動きが数多く隠されているのかもしれません。

とはいえ、太極拳の理論が解ってしまえば、太極拳は難しくなくなります。

もし長年やっていても難しいと感じているのなら、
それは自分自身で難しくしてしまっているのか、
それとも商業的な戦略なのか。

午後からM子さんの昇段試験のためのレッスンをしました。
昇級試験までは動作が出来ていれば合格です。
しかし昇段試験からは勁が使えなければいけません。

太極拳で最も大事な勁なので、
有段者ともなれば勁を使えることが最低限の条件になります。

体重100キロと体重50キロがまともにぶつかったら
50キロに勝ち目はありません。

どうすれば?

その不可能を可能にするのが太極拳です。
太極拳独自の化勁(かけい)という力を使います。

体が小さい人には小さい人なりの闘い方があるのです。

M子さんはようやく丹田との繋ぎ方が解ったようです。
約8年、ずっと解らない解らないと嘆いてましたが、ようやく感覚を掴んで本人大喜び。
暗勁で打ってもらったら、腕力ではない重い衝撃が体の中まで伝わってきました。

本気で色帯を目指し始めてからM子さんは本当に変わりました。
これからが楽しみです。






2022年4月5日火曜日

カメラに映らないもの

そういえば、前々回の青空太極拳の時に、
最初から最後まで遠くから動画撮影されている方がおられました。

物珍しさに撮るという感じではなく、
ずっとカメラが回っていたのでそれがどんな目的なのかすぐに察しがつきました。

まずお礼を言わせてください。
当会の太極拳に興味を持って頂きありがとうございます。

とはいえ盗撮はダメですよ!

興味があるなら一緒に参加すれば良いし、
撮影したいなら許可を取る。
大人としてこれぐらいのマナーは守って頂きたいです。

とはいうものの、
動画を撮ったところで当会の太極拳は決して解らないでしょう。
見た目だけ真似ても決して当会が目指す太極拳にはなりません。

当会の目指す太極拳は人前で披露するための太極拳ではありません。

心と体を鍛え、悟りを得るための禅であり武術として行っているからです。
青空太極拳はそれを皆で共感し合う機会なのです。

目の前に置かれた料理の写真を撮っても、食べてみなければ決して味は解りません。
食べることによってはじめて、その料理のおいしさや素材への拘りや調理法が見えてくるのではないでしょうか?

伝統太極拳は続けていくことで様々な気づきが得られ感動が得られます。
そして更に上を目指したくなるし、楽しみは一生続きます。
套路はそれを得るための手段であり、目標ではありません。

套路は太極拳の先人達が、
カッコよく演じることを目的として作ったものだと思いますか?
いいえ。
套路は心と技と体を鍛えるための特別な鍛錬法です。

その先に何があるか?

それは今の自分を超える能力です。

歳は関係ありません。
大事なのは感じること。

若い人は体力はあるけど雑念が多いです。
選択肢が多いからです。
逆にご年配はそのことだけに集中することが出来ます。
体と心の衰えと共に選択肢が減ってくるからです。

太極拳、始めるのに遅いことはありません。
いや、寧ろ遅くていいのです。



一を極める

昨日は、午前普通クラス、午後は個人レッスン、夜間双辺太極拳クラスでした。

普通クラスで行っているのは伝統楊式太極拳。
当会で一番盛り上がるのは散手(技の用法)の時間です。
今回は如封似閉(にょふうじへい)をやりました。

毎月1回、和歌山から熱心に通ってるTさん、
今日は午後からの個人レッスンで抜き打ち気功テストを行ったところ、なんと仮合格。
いわゆる合格点でした。

話を聞くと、自分が教えている教室でこの気功を取り入れているとのこと。
制定拳の教室に気功を取り入れるというスタイル、
とてもいいと思います。

そんなTさんがこんなことを言いました。
「先生、陳式もされればいいのに」と。
私は即座に答えました。
「楊式以外やるつもりはない」と。

Tさんは軽い気持ちで言ったのでしょうが、
私にとって楊式太極拳は命です。

今やっている武術に何の迷いもありません。
目標もあるし、生涯掛けて成し遂げたいこともあります。

師との絆も大切にしたいです。
それだけのことを私に授けて下さったし、
師の意向に反することなど決して出来ません。

そもそも套路のレパートリーを増やすことに興味がありません。

套路をコレクションのように集めるのも愛好家の皆さんの楽しみのひとつだと思いますが、
私は広く浅くやるより一つを極めたいです。

八極拳の名人、李書文の言葉に
「千招知るを恐れず、一招知るを恐れよ」という有名な言葉があります。
「多くの技を身に付けるより、ひとつの優れた技を極めよ」という意味になりますが、私はこの考えがとても好きです。

過去に「太極拳の全流派を覚えて教えたらどうですか?」と言ってきた拳友もいましたが、その場で「興味ない」と一蹴しました。
陽式ですらまだ極めていないのに、あれこれ手を出してしまったら目標達成が遠のくだけです。

おそらく陽式太極拳を一つの套路として勘定しているのでしょうが、
私が知っているだけでも、陽式太極拳には5つの古い套路があります。

それに、刀、剣、棍、槍などの武器法。
徒手の対打套路では九十式の技があります。

他にも発勁法、化勁法だけでも何十種類とあり、
それだけの勁が使える人がどれだけいるでしょう?
おそらく1000人に一人もいないのではないかと思います。

20年掛かってもこれらをまだすべて修得出来ていないのに、
とてもではないですが、他流の套路を覚えている時間などありません。

一つを極める。

私が生徒の立場なら、このような先生について学びたいです。

今の師につき一生修行したいと思っているのはこのような理由からです。