私が最初に習っていた教室で先輩がこう仰った。
「筋力が衰え始める50代からが本当に強くなる」と。
当時40そこそこだった私にとっては衝撃的な言葉だった。
だから50代になるのが楽しみだった。
そして今50代になった。
確かに10代20代の頃のようなパワーはなくなった。
しかし、だからといって衰えた訳ではない。
いや、むしろその頃よりパワーが増してる気がする。
放鬆(ほうしょう)した状態で仲間の手の平に崩拳を一発入れる。
すると仲間は相当なパワーだと言う。
力を入れずに打っているので自分では解らないがかなりの衝撃が来るらしい。
そして今太極拳や武器などの練習を行う時、出来る限り放鬆して套路を練ってみる。
するとまた違う感覚が得られる。
なんというか、ずっしり沈むような感覚。
これが実に気持ちいい。
力を使わない。
早く動こうとしない。
気を丹田に沈め、そして丹田から動く。
動くというより動かされるような感覚。
これは美しい演武をするのにも推手や散手をする時にも通じる。
武術は楽しい。