なんとなく昔の資料をひっくり返していたら
太極拳で重要な十六の言葉が記されたコピーが出てきた。
何度もコピーしたものらしく、文字ははっきりしないが
その中でぱっと目に入った言葉が、下実上虚(かじつじょうきょ)
なぜこの言葉が目にとまったかは自分でよくわかっている。
最近套路を練る時、特に意識していることだからだ。
この下実上虚がしっかり出来るようになると、動作がとても安定してくる。
やわらかい動きなのにずっしりとした重量感を出てくる。
そして、気の通りが良くなる。
この言葉の意味は特に記されていないが、
一言でいえば「重心を落とせ」ということになるかと思う。
足腰はずっしり。
腰から上はふわっと。
最初のうちはどうしても逆になる。
なぜなら、最初はどうしても手で動こうとしてしまうから。
手が動こうとすると腕や肩に力が入り、
その一方、足腰がまだ出来ていないからふらふらする。
ふらふらするから、尚のこと上半身に力が入り、重心が上がってしまう。
そのことでまた更にふらふらする。
全くもって悪循環であるということ。
だから下実上虚なのだが、
そうそうすぐにできるものではない。
どうすればいいか?
当然のことだが、練習しかない。
ちなみにこの下実上虚、下半身に力を入れるのではない。
気を沈めるということ。
力はどこにも入っていてはいけない。
自分がまるで水の入った皮袋になったかのごとく、
体まるごとゆるめなければならない。
そうすることで自然と下実上虚になる。
ひとりよがりになるかもしれないが、この感覚が実に気持ちいい。
本当においしいものは香り、味、舌触り、歯触り、そして後味までおいしい。
套路ひとつでこれほどまでに楽しめるのかと思うほど。
これこそが伝統太極拳の醍醐味と言えよう。