かつて出会ったある老師が次のように仰いました。
「初日に習った2時間と10年は変わらない」
その時はピンとこなかったですが、時間が経つにつれこの言葉の意味がとてもよく解るようになりました。
当会では最初に姿勢、脱力法、歩形、歩法、套路、推手、散手を90分の稽古で学びます。
そして10年経っても私は同じことを教えるでしょう。
初日に教えることと10年後に教えることはなにも変わらないのです。
何年やっても何十年やっても基本は不動です。
そしてその上に様々な技術や勁を学び感覚を身に付けていきます。
因みに私は一度しか合ったことのない師から教わったこともそのほとんどを覚えています。
覚えたいという意欲がありましたし、
「忘れてはならない」と思いその後しっかりメモをとりましたから。
その教えは10年経っても20年経ってもずっと私の中で生きています。
何が言いたいかというと、
「今」を大事にして欲しいということです。
「そのうちできるようになるだろう」
と漫然と練習をしていても上達することはありません。
大事なことは教わった基本をしっかり頭に叩き込んでそれを実践しようとする意欲です。
師は必ず重要なことを教えてくれます。
それを聞き逃してはいけまぜん。
仮にその時に解らなくとも解らないなりにメモに取っておけば、いずれ解る日がきます。
そして解った時、それが大変貴重な宝物であることに気づきます。
せっかく貴重な時間を割いて稽古に参加しているのですから、
わずか90分集中することで一生ものになる技を身に付けることも出来るのです。
もちろん体を動かしたいということで参加するものいいでしょう。
しかし、上を目指すなら、
だらだらしたり、ぼんやりしながらやるのではなく、
しっかり意識を高めましょう。
そうすれば90分の稽古が自分にとって生涯の財産になるでしょう。