2016年8月9日火曜日

揺れる立禅

伝統太極拳では套路(型)の練習をする前に必ず立禅を行う。
これをやるのとやらないのでは全く違う。

因みに立禅を筋トレだと思っている方もおられるようだが、私の解釈は違う。
呼んで字の如く〝禅”なのだ。
禅とは邪念を払い、無になること。

仮に立禅を行わないで套路を行うとカタチだけの動きになってしまう。
これを否定するわけではないが
私の経験上で言えば肩がこってしまう。

私は子供の頃から酷い肩こり症。
だから、肩がこることをすると極度なストレスを感じる。

ストレスを発散したくて行っている太極拳がいつのまにか体を硬直させ、
それがストレスになるのなら全く意味がない。

しかし、立禅を行ってから套路に入ると全然違う。
套路に命が宿る。

立禅は少なくとも15~20分程度するのが良い。

ここで大事なことは、姿勢、呼吸、心

まず正しい姿勢をつくる。
次にゆったりとした自然呼吸を行う。
睡眠中の腹式呼吸と同じで、意識した呼吸は行わない。
次に邪念を払い意識を丹田に沈める。

私の場合ここで3つのことを行っている。

一つは意識的に体内に気を巡らせる。
もう一つは無になる。
最後のひとつはそれによって体内に起こる変化を感じる。

時によっては、素晴らしい景色を思い浮かべあたかも自分がそこにいるようにイメージすることもある。

ところで立禅で大事なことはじっとしようとしないこと。
じっとしようとすると必ず力みを生みだしてしまう。
じっとするのではなく、姿勢を正し、脱力する。

例えばこんにゃくを縦にして立てることはできない。
しかし真ん中に串を通せば立たせることができる。
この串を中心軸とし、後はこんにゃくのように柔らかくなることをイメージする。

とにかくじっとしようとしてはいけない。
ゆるみの世界を楽しむという感じ。

先日、師匠の後ろで立禅を行ったが、気が付くと師匠の体がゆらゆら揺れている。
その動きは決して意図的なものではなく、自然に動き出したものだと感じた。

体の周りに気が集まってくると、なんともいえない柔らかいものに包み込まれているような感覚に入る。
幸福感を感じる。
そしてその気(外気)や体内の気(内気)にゆらぎを感じる。
その気の中では水の中で波にゆられ揺れるのと同じように、ゆらゆら揺れ出す。

立禅というと真っ直ぐじっと立たなくてはいけないように感じるかもしれないが、違う。
回ってるコマが静止して見えるように、動いているのだが止まって見えるだけ。
止まろうとしてはいけないということ。

この辺が体感できるようになると立禅がもっともっと楽しくなるはず。
因みに私は今、立禅を行うのが一番楽しい。