2年前師匠に稽古をつけてもらうために東京へ行った時、師匠から言われた。
「そっちの太極拳やって混ざらないか?」と。
そっちとはいわゆる競技用太極拳のこと。
いわゆる「混乱しないか?」という意味だと思う。
その頃の私は伝統拳と競技用を完全に切り替える自信があったし、それが楽しくもあった。
しかし今、切り替えることは出来ても体そのものが競技用を受けつけなくなってきた。
心も体も拒絶反応を起こす。
競技用のトレーニングを始めると精神的にひたすらストレスを感じ、
身体的には疲労感がとれなくなり、節々が痛み出す。
太極拳は健康によいはずなのに、心も体も疲れきっていくこの感覚は?と疑問を感じ始めた。
競技で良い成績を得るために過酷なトレーニングをする。
それはそれで素晴らしいことだと思うのだが、
年齢的にも50を過ぎ、身体的にも無理が効かなくなってきている。
そもそも健康になりたくて始めた太極拳だ。
実際に酷い肩こりや腰痛も改善し、体力もついた。
精神的にも強くなり仕事への意欲も向上し、生活にもゆとりが出来るようになった。
これ全て伝統太極拳のおかげ。
伝統拳はやればやるほど元気になる。
ところが競技を目指すようになってから調子が狂い始めた。
ひたすら体が疲れるので仕事にも影響するし、体が疲れると精神力も落ちる。
太極拳競技で優勝する夢もあったが、
私が太極拳を始めた理由とは逆行していることに気付いた今、これを続ける理由はない。
今年の全国大会を最後に競技用太極拳を辞める決心をした。
これはあくまでも私の考えであって競技用太極拳を否定するものではない。
若い頃から体をつくってきたならまだしも、私の場合は40歳ぐらいまで運動とはほとんど無縁だったし、健康になりたくて始めた太極拳だからだ。
これからは内なる声を否定することなくありのまま受け入れたいと思う。