気沈丹田とは、気を丹田に沈めること。
気とは意(意識)であり、
丹田とはパワーの源、或いはエネルギー貯蔵庫でもある。
その部分はお臍から約5㎝下、その奥5㎝ぐらいの部分。
無論体型によって若干ことなるが、
医学的に見ればいわゆる仙骨の前、腸の部分であり、女性であれば子宮も含まれる。
丹田には人を豊かな心へと導くパワーがあり、
夢や願いを叶える自己実現の力も持っている。
丹田に疼くような力を感じる時、それは自分がパワフルな状態であり
物事を良い方向へと引き寄せる力を発する。
太極拳ではこの丹田を開発することを重要視する。
太極拳での戦いは丹田からパワーを発し、そのパワーによって相手の力を吸収しそれを返す力を身につけていく。
自分から攻撃しかけることはない。
いずれもこの丹田を鍛えることは、
心と身体を強くし、健康を増進させ、豊かな心を手にいれることができる。
さて、太極拳の練習をする時、何を意識するだろう?
手の位置?
動作?
歩型?
姿勢?
もちろん全部重要。
中でも一番大事なことは姿勢(軸)と丹田。
まず起勢の時、何を意識するだろうか?
手を前に上げようと意識するのではないだろうか?
もちろん動作を始めて覚える時はまずそれをできるようにする。
そして練習を積んでいくと、無意識でも手は正しい間隔、正しい位置、正しい動きで動こうとする。
無論そうなるまでは徹底的に意識することが大事。
いきなり無の境地になど至れるはずはなく、最初は意識から始まる。
更に鍛錬を積んでいくと、起勢の時、手は無意識に勝手に動くはずだ。
それは起勢限らず、
攬雀尾、単鞭、楼膝拗歩、搬欄捶、十字手、倒輦猴、雲手、踵脚、下勢、どれも全て。
いわゆる無意識でも正しい姿勢で正しい動きが出来るようになることが太極拳で学ぶ最初のステップ。
そして次は、丹田を意識すること。
単鞭は自分に勝手にやらせる。
というより勝手に体が動いてくれる。
その時意識することは丹田と動きを一致させること。
これを内外相合(ないがいそうごう)という。
最もわかりやすい例で言えば、踵脚。
ほとんどの人が足を上げようと思うだろう。
しかし、足を上げようと思わなくとも、足は勝手に上がってくれる。
それよりも意識することは丹田。
足は足に勝手にやらせておいて、意識は丹田に集める。
そして足を蹴り出した時に丹田から気を放射させる。
踵脚は足をあげる運動ではない。
蹴り技。
もっと言えば、丹田から気を炸裂させるところ。
先輩は踵脚の動作を教えてくれる時、足の上手な上げ方ではなく
「こんなふうに波動を飛ばす」と教えてくれた。
先生は「宇宙に気を飛ばす」教えてくださる。
いずれも脚の上げ方など一度も教わったことがない。
いずれも、丹田から気の流れは常に上下左右前後に発せられており、
その力を使って自分自身の体を操っていく。
先程、丹田は腸がある場所と言ったが、それは下丹田の位置。
上丹田は脳の位置、中丹田は心臓の位置、そして下丹田は腸の位置。
脳は常に無意識でも働いており、心臓も同じく無意識に動き続け、そして腸も。
腸に対し脳から指令など送らなくとも、食べたものを自動的に栄養として取り込み、不要なものを排出してくれる。
あと、忘れてはならないのが腸内菌。
腸に住む腸内菌は100兆個以上と言われその数、世界人口より多い。
しかもその重さはなんと1キロ以上あるという。
腸は100兆もの生命が宿っているということ。
うち1割が悪玉菌、善玉菌は2割、
そして善玉でも悪玉でもないどっちつかずの菌である日和見菌(ひよりみきん)が7割。
この日和見菌は善玉が優勢であれば善玉菌につき、悪玉が優勢になると悪玉になるという意志薄弱な菌。
人間社会でもありそうな・・
とかく悪者扱いされる悪玉菌は絶対必要。
なぜなら、悪玉がなければ善玉の力が衰え、それこそ悪玉菌に支配されてしまうから。
人間は常に腹の中で闘っているということ。
まとめると、腸は指令を送らなくとも自ら腸を動かす意識を持っている。
そして、100兆以上もの生命を持っている。
これが腹にエネルギーを感じる理由。
腹を鍛えれば体まるごと健康になる。
腹を鍛えれば太極拳が上達し、強くなる。
とにかく気沈丹田なのだ。
意識を丹田に集中させれば氣がどんどん集まる。
氣は力。
つまり丹田が自分の太極拳の質を上げ、幸運をもたらしてくれる。
私は今でこそ武術を専門としているが、
元はといえば栄養学や予防医学が専門。
分野は違えど、どちらも人の健康を願っていることには変わりない。
丹田を鍛えよう!