2018年10月16日火曜日

横への重力

「押さないでください」
推手をしている時にある会員さんからこう言われた。

私は押してもなければ引いてもいない。
なにもしていない。

なにもしないことは地球と同調している状態。

では逆に押しているように感じさせないためには何をしなければいけないだろう?

それは力を使うこと。
力を使って重力に逆らわなければならない。

それはいわば朝目が覚めて体を起き上がらせるような感じ。

私が一日で一番嫌いな瞬間。
寝ている状態はいわば最もリラックスしている状態。
その体を重力に逆らって起こさなければならない。

人間の体の60%以上は水分。
いわば水の入った皮袋のようなもの。
その体を起こすためには筋肉を使わなければならない。
そうしないと体を起こしたり立たせたりすることはできない。

逆に力をどんどん抜いていくと、固体であった体が液体になる。
包み込まれた液体は下へと流れようとする。
その流れ落ちようとする力が足裏に到達すると、
今度は行き場を失い横へ流れようとする。

ビニール袋に水を入れて床に置くと横へ横へと流れていこうとするのと同じ。

だから脱力した状態で手を合わせるとその力が相手に伝わる。
重力によって生み出される力である。

力を抜くというのはなかなか難しい。
何故なら生まれてこのかたずっと力を使って生きてきたのだから。

力を抜くことを最も邪魔しているのは心。
心がゆるまなければ体は決してゆるむことはない。
なぜなら体は心が支配しているのだから。

力を抜こう抜こうと躍起になっては余計に体を硬くしてしまう。

まず頭を空っぽにする。
意識を腹に落とす。
重さを足裏に沈める。

私がいつも立禅の時に説明することだが、
頭を空っぽにすることは、それに慣れていない人にとってはもしかしたら勇気のいることかもしれない。
特に優れた頭脳を持っている人ほどそう思うのではないかと。
考えることで今までうまくやってきたのであれば、尚のことだろう。

しかしこれしか方法はない。

頭を空っぽにする。
思考回路の電源を切る。

すると心がゆるみ体がゆるむ。
とても気持ちがいい。