2022年1月28日金曜日

解らないと言えること

あくまでも私の場合ですが、

解らないことを解らないと言える武術家が一番カッコいいと思います。

実際そうなのです。

経験していないものを頭の中で分析したり推測するのは自由ですが、
それを最もらしく言うのは違うような気がします。
門派が違えば、技も技法も力の使い方も違うからです。

例え、同じ太極拳でもひとくくりにしてしまってはいけないと思います。

私の専門は楊式太極拳ですが、
陳式太極拳や呉式太極拳の先生とお手合わせさせて頂いた時、楊式とはかなり違うことを知りました。
呉式太極拳は楊式太極拳から派生したものなので共通する部分は多いですが、とはいえ、やはり違います。

やはり長年学ばねば解らないことが多く、
その威力は実際に手合わせしてみなくては解りません。

楊式以外には双辺太極拳も修練していますが、
その他にも陳式、呉式、孫式も少しだけ学びました。

とはいえ短い套路を覚えただけです。
勁の使い方や戦術は知りません。

他流の動画等を拝見すると凄いなと思うものばかりですが、
確かにそれらとの共通点を見つけることも出来ます。

しかし、それはあくまでも視覚的な情報だけであって、実際に技を掛けられてみなくては、その本質は決して解りません。

だから、私は憶測だけでそれらを決定づけることはしませんし、
もしかしたらその憶測ですらその流派の技(罠)かもしれません。
少なくとも楊式太極拳にはそのような技が数多く潜んでいます。

他の武術や武道経験ある人が当会の稽古を経験すると、
まず楊式太極拳の技にとてもビックリされます。
いわゆる「想像と違った」ということです。

太極拳と柔術は共通点が多いですが、それでもやはり違います。
太極拳は本来、陰陽論を元に仙道から生まれた武術なので、物理学の他に霊子力学が含まれます。
これも実際に経験すると、今までに経験したことのないような驚きと恐怖を感じます。

だから推測したり模索しても無駄なのです。
そもそも推測で解ってしまったら武術ではありません。

合気道の技を掛けてもらったことがありますが、見た目のダメージはそれほどでもないように見えますが、腕を掴まれた瞬間にかなりの痛みが走ります。

柔術である心眼流もその名称とは裏腹に技を掛けられると骨を砕かれるような痛みを受けることになります。

経験しなくては解らないことです。

その他にも心意拳、形意拳、意拳、陳式太極拳などの内家拳の先輩や先生方とも手合わせさせて頂いたことがありますが、流派が異なるだけのことはあり、それぞれに独特の技法があります。
決してひとくくりには出来ません。

心意拳の崩拳を喰らうと、翌日までその痛みが続きます。
八卦掌の穿掌をまともに喰らい激痛が2週間続いたこともあります。
形意拳の勁返しを喰らって1年以上痛みが残ったこともあります。

とにかく動画を観ただけでは決して解りません。

だから他流の方との交流ではそれらのことをリスペクトすることが大事だと思います。

解らないことを解らないというのは大事だと思います。

私の場合は解らないとハッキリ言います。
解らないことを解ったように言うのは嘘になるからです。
その嘘がバレるのは時間の問題でしょう。

動画だけでは解らないことが多すぎて解析すら出来ないことも多々あります。
だから、ただただ凄いとしか言えません。

そもそもぱっと見で、手の内が解ってしまうのであれば、
功夫もまだまだそこまでということになるでしょうから。

他流の魅力はやはり想像の裏にある秘密(秘伝)にあると思います。