先日ある会員さんにこんなことを尋ねられました。
「なんで単鞭って片方しかないんですか?」
私は即座に「全く必要がないから」と答えました。
そもそも単鞭の技をこれまで何度も使ってきて
「逆もあったらいいのになぁ」と思ったことがありません。
ここで思い浮かべるのがお箸です。
左利きの人は例外として、
左手で箸を持って右手で茶碗持って食べたいと思うでしょうか?
弓を構える時も右手で弓を持ち右手で矢を放ちます。
ギターを抱える時も左手で指板を抑え右手で弾きます。
単鞭で言うなら、左手が開掌の方が何かと応用が利くし、
鉤手は圧倒的に右の方がいいですね。
左手だとイマイチパワーが出せません。
それに「掌=受け、拳=突き」という考えも捨てた方がいいでしょう。
逆でもいいのです。
単鞭も左右の手はそのままで、掌で捌き鉤手で打つという用法もあります。
こんな風に太極拳の動作に疑問を持つことはとても大事だと思います。
ただ与えられたものをそのままやるだけでは
太極拳を100%楽しむことは出来ないし、
勁力をつけることも出来ません。
因みに発勁とは腕力で出す力とは違います。
流派によって捉え方は様々でしょうが、発勁の発動源は丹田であり、
丹田が動けば体内の重さが体の中で揺れ動き、それが波のように相手に伝わっていきます。
実際に比べてみれば体に受ける感覚は明確に違います。
長年太極拳を研究すればするほど、
本当によくできた武術だと感嘆するばかりです。