左掌に右拳を打ち付ける動作がありますが、
これは一体何なんでしょう?
当会では形意拳も行っていますが、
連環拳(れんかんけん)や八勢(ぱーせい)、
雑色捶(ざっしきすい)にこの動作があります。
陳式太極拳の型にも似たような動作がありますね。
ある陳式太極拳の先生に尋ねたところ、
「打つ動作ではなく打つ前の動作が技である」と教わったこともありますし、
「力強さを強調するためのアクセント」とコメントしている方もいました。
陳式太極拳に関しては私は門外漢なので解りませんが、
形意拳でのこの動作の意味は以下の通りです。
この動作には3つの意味あります。
一つは技です。
どんな技が想像できるでしょう?
想像内かもしれないし、
想像外かもしれません。
特に内家拳では敵を欺くため、あえて技を隠します。
掌と拳を打ち付けていますが、
実際このように打ち付けるのでしょうか?
もしかしたらある程度間隔があったり、
打つ位置がずれているかもしれません。
いずれも恐ろしい技であることには違いありません。
もう一つは鍛錬法です。
ボクシング等ではサンドバッグを打ったりして練習しますが、
太極拳や形意拳に関してはそのような練習をすることはあまりありません。
そもそも発勁動作は気の爆発なので、
サンドバッグを強く打てるようになることとはあまり関係がないのです。
ですから内家拳では瓦割りなども行いません。
物を破壊する力ではなく、細胞を破壊する力が内家拳の発勁なのです。
先程、発勁は気の爆発だと説明しました。
そして、気のパワーは丹田力に比例します。
なので両手を強く打ち付けることはしません。
アメリカンクラッカーをご存じでしょうか?
紐で繋がった両端の玉を打ち付け合うおもちゃですが、
あの原理に似ています。
玉には当然ながら動力はありません。
動力源は紐を持った指にあります。
最初は玉同士が下でコンコンぶつかり合いますが、
手の振りを大きくしてやると今度は上下で球がぶつかり合います。
手を玉だとしたら、腕は紐です。
そして動力源は丹田になります。
いわば、この動作は丹田力を鍛える方法の一つとして捉えることが出来ます。
3つ目は練度確認です。
内家拳では勁力を重視します。
ところがやっかいなことに、
勁力が上がってきたかどうかは自分では解らないものなのです。
師に「勁力上がったな」と言われても
「そうなのかな?」といったぼんやりした感じです。
勁力は実感がないのです。
だから「勁力を出すぞ!」という意識で出せるものではありません。
あえてあるとしたら
威力を出そうという雑念を払い、無となり、空となることです。
もし勁力が上がったら、
両手を打った瞬間にそれなりの手ごたえを感じるはずです。
ボールの威力があることを球威と言いますが、
左掌で受けた右拳がズッシリと重く感じたら、
勁力が上がったと思って間違いないでしょう。
両手を打ち合う動作。
あれは演出でもパフォーマンスでもありません。
内家拳では大変重要な動作なのです。