2017年12月22日金曜日

禅に戻る

太極拳は元々、道教から生まれた武術だと言われる。
いわゆる元は禅であったということ。

禅とは瞑想することで悟りを得るための業で
瞑想とは無我無心の状態のこと。

又、悟りとは煩悩(ぼんのう)から解放され神と繋がること。(全知全能の状態)
更に、煩悩とは自分の心を不安定にする要素(欲望や妄想)

あるダンサーが太極拳を見て舞踊だと言ったという。
それは舞踊化した太極拳を見てそう思ったのだろう。
本来、太極拳は禅であり、護身武術なのである。

仮に私が太極拳の套路を練る時に何を意識するかというと
軸と脱力と気の流れだ。

なぜこれらを意識して動くかと言うと、
套路は高次元護身武術である太極拳の鍛錬方法の一種であり踊りではないから。

あえて高次元と言ったが、
それは単に見た目の動きだけを重視しているからではないからである。

ヨガも最近ではパワーヨガやホットヨガなど様々な種類があるが、
私が学んだヨガは自己の能力を最大限に引き出すためのスピリチュアルヒーリングであり
柔軟性を高めるための体操ではない。

私の知る限り人間の持つ霊的センターである7つのチャクラを開発することが目的である。
最終ステージである7つ目のチャクラが開いた時に悟りを得ると言う。

ヨガを世に広めるために、ファッション性を取り入れたり、
美容やダイエットなど多くのニーズに応えるため、
本来のヨガから気軽に楽しめるヨガへと多様化してきたことを見ていると、
武術もまた同じ道を辿っているように見える。

先月、師の元で稽古させて頂いたが、
師は決して私の演武が上手いとか下手といった表現をされることはない。

その代わり言ってくださることは、
「丹田が出来てきた」といったいわゆる内面的なこと。

私は太極拳を美しく演武出来るように修行しているのではなく
丹田を鍛え、丹田を開発するために修行している。
だから師のお言葉は実に嬉しい。

ヨガも太極拳もチャクラや丹田を開発していくということでは共通している。

共通している点は・・
第2チャクラ=下丹田(かたんでん)
第4チャクラ=中丹田(ちゅうたんでん)
第6チャクラ=上丹田(じょうたんでん)

ヨガは会陰である第1チャクラから開発していくが、太極拳では下丹田から開発していく。

更に太極拳では天地人(てんちじん)という考えがあり、
その3つの丹田と更に天と地を繋ぐ。
ヨガでも同様に7つのチャクラと天と地と繋がることがテーマとなっている。

太極拳ではその基本を立禅で鍛え、立禅から学ぶが、
坐禅やヨガの瞑想もそれと同じものだといえるだろう。

実は今回私がお話したかったのは
「太極拳は一体なにであるか?」ということ。

太極拳もまた多様化し舞踊やスポーツとして親しまれるようになってきた。
しかし本来の太極拳は踊りでも運動でもない。

太極拳を普及させるために様々な方法でアプローチするのは良いことだと思うが、
その根源や目的意識を見失ってはいけないと思う。
これが私が伝統太極拳に強く拘る理由であり、いずれ伝統が見直される時期が来ると信じている。

太極拳は禅に戻る。

それは物質世界に飽きた人類が精神世界に戻ろうとしている流れに沿うものであり
今後多くから求められることになるからである。