昨日午前、稽古納めを終え、
その後弟子との今年最後の稽古を行った。
弟子の意気込みは増すばかりで、それと同時にどんどん勁力を上げている。
速い突きはことごとくかわし、あらゆる攻撃に対しての柔軟性も身につけ始めている。
いなす力だけではなく、発勁力も確実に上げている。
私は基本、相手の稽古台になる時は自分の勁力を試すことはしない。
最終的に勁を勁で返すことはやってみせるのだが、
それまでは感覚を掴んでもらうための相手役に徹するようにしている。
勝負をしているのではなく
稽古をしているのだから当然と言えば当然なのだが。
散手での発勁は、あの小さな体からは考えられないパワーがこちらに伝わり
踏ん張らなければ簡単に吹っ飛ばされる。
話を聞くと、学生時代、勉強も運動も苦手だった上に大人しかったため
人に見下されたり馬鹿にされたりすることが多かったらしく
それだけに「強くなりたい」という気持ちが人一倍強かったようだ。
その念願は今の時点でも十分叶っていると思う。
彼女は本当に強くなった。
そんなこんなで彼女には速い突きは通用しなくなってきたので、
次なる段階の稽古を始めた。
そして私もようやく腰を据えて推手ができるようになってきた。
まず推手で大事なことは、姿勢と脱力。
姿勢の良さは強さに比例し、姿勢の悪さは勁力を下げる。
姿勢が悪いと、相手に隙を与え、いなすことも出来ず、打つこともできない。
姿勢は大事。
次に脱力。
力んでると相手に攻撃の機会を与えることになる。
打たれまい、崩されまいと頑張るのは逆。
力を使おうとすると、それを相手に利用されてしまいそしてその力で今度は自分が崩されてしまう。
打たれまい、崩されまいという意識は太極拳では全く役に立たない。
そんなものはドブに捨てよう。
大事なことは、自分という存在を固体としてみないこと。
液体でもない。
気体でもない。
あるのは魄だけで、相手の魂を感じ、
そして起きていることを素直に受け入れ、それを自分の魄に任せる。
そんな感覚。
意が氣を作り出し
氣が勁を生む。
勁はパワーであり、その威力は無限大。
その力は筋力を遥かに凌ぐ。
太極拳が益々おもしろくなる。
太極拳を踊りやスポーツとして楽しむのは自由だが、
本当は皆、不思議な力を手に入れたいと思っているはず。
アニメやゲームだけの世界に終わらず、
それをリアルで体験できるならこんなにおもしろいことはないし、
少なくとも私は生涯かけてやりたいと思う。