形意拳は五行説からなる五行拳と、
12の動物の形を真似た十二形拳があるが、
一番好きなのは崩拳。
崩拳には防御がなく、ただ拳で打つのみというシンプルさに魅力を感じる。
防御がないということは打たれる前に打たなければならない。
一瞬でも判断が遅れると命取りになる。
最初はそのことに不安に感じたが、
今ではそのことが男心をくすぐられる。
私が崩拳を指導する時、
三つのことを特に重視するよう伝える。
一つは拳の形。
二つ目に脱力。
そして三つ目にタイミング。
崩拳は力一杯打とうとすればするほど、パワーが衰える。
それも当然。
熟練した空手家やボクサーのように徹底的に鍛えぬいた腕から突きだされる拳と異なり、
こちらは突きの練習なんか一切していない。
力を使って打とうとしたら、へなちょこパンチになるのは目に見えてる。
だから力を使わない。
その逆。
脱力する。
打たずに、スっと拳を前に進めるだけ。
子供の頃、殴る時はコインを握って打つとパワーが増すと友達から教わったが、
恐らく何かを握ることによって握る力が強くなるのだろう。
ところがこれまた形意拳では逆。
しっかり握らない。
拳の形を指導する時は、少しでも違ったらすぐさま直す。
崩拳の拳は絶対重要。
恐らく、何も考えないで握った拳より数倍から十倍以上は威力が増すと思う。
タイミングも大事。
拳に自分の体重とパワーのすべてを注ぎ込む。
体重が60㎏なら質量60㎏の拳になり、
エネルギーを注ぎ込めば、そのパワーは体の表面を貫き背中を貫通する。
なんだか恐ろしい話だが、
崩拳の達人である郭雲深は、敵の正面を打てば背中の骨が折れ、更には壁をぶち抜いたこともあるとか。
他にも崩拳の達人である尚雲祥に関しては寝ているところ窓から侵入した敵に腹を踏まれ、その弾みで跳ね返され窓の外に放り出されたという。
達人ともなれば寝ていても強いんだと(笑)
それはともかく、
昨夜も弟子相手にミット打ちを行ったが、
私が打つ、崩拳や鑚拳は半歩も進まない。
半歩の更に半歩。
10㎝ぐらいだろうか?
つまり1/4歩で、ミット越しと言えど、背中まで貫通する崩拳となるらしい。
弟子曰くその日はずっと背中が痛かったらしい。
いずれもどんなにパワーが上がってきても、
結局相手が打つ前にそれを察知し、素早く打ち込まねばならない。
これに関しては太極拳で聴勁を鍛えたほうが良さそうだ。
これからも様々な実験を繰り返しながら鍛錬を積んで行きたいと思う。