楊式太極拳では打ったり受けたりする動作がない。
正しく言えばあるが、それがわからないのが楊式太極拳の特徴だと思う。
他の武術や格闘技を見ていると、
打ったり受けたりする時に何かしらの動きが必ずある。
それは、
腕であったり、肩であったり、腰であったり、脚であったり、目であったり・・
しかし楊式にはそれがない。
ノーモーションなのである。
師の拳を今まで何度も受けたことがあるが、
打ってくるタイミングがわからない。
だから、壁に激突しそうになるほど吹っ飛ぶ。
その特徴となる打ち方が暗勁と言われる。
この場合の暗とは勁(力)を隠すという意味だと思われる。
例えば同じ太極拳でも陳式太極拳があるが、こちらは明勁。
明らかに打つ動作(モーション)がある。
しかし、その威力があまりにも凄まじいので
来るのが解っていてもなかなか避けきれない。
かなり動体視力が優れているのであれば、かわせるだろうが
いずれもこの陳式独自の明勁に楊式の化勁を使うのはなかなか難しい。
では、楊式の暗勁はどんな感じだろう?
私のイメージでは、風。
風は目に見えない。
そよ風から入り、その風がいきなり突風に変わる。
師に拳を突き出すと、風のようにいなされ、風の如く打たれる。
昔のアニメに赤胴鈴之助というのがあったが、
もっとも凄まじい技が真空斬りといい、自ら風を起こし風で相手を吹っ飛ばす。
子供の頃あの技にすごく憧れた。
こんな技が使えたら、悪い奴をガンガンやっつけることができると(笑)
あれはあくまでもアニメだが、
かなり共通するものはあると思う。
私が楊式太極拳の魅力にとりつかれどんどん嵌っていくのは、
子供の頃、風を扱うあの技に憧れたからだと思うし、
なにより私は風がすごく好きだから。