当会では技の名称を日本語読みしている。
理由はわかりやすいから。
例えば楊式太極拳に攬雀尾という技があるが
それを「らんじゃくび」と呼んでいる。
中国語では「ランチュエウェイ」
英語の場合は「Grasp The Bird's Tail」
発音をカタカナにすると「グラスプ・ザ・バーズ・テール」となる。
外国語をそれなりにかじったことのある方なら解ると思うが
中国に行ってまんま「ランチュエウェイ」と言って通じるだろうか?
日本語なら棒読みしても通じるが、
中国語も英語もイントネーションで聞き取っている部分が多いので通じない場合が多い。
例えば踵脚(とうきゃく)
これを中国語読みすると「ドンジャオ」になる。
しかし私が台湾の先生から習った発音は「トゥンチャオ」だった。
発音する時はトゥにアクセントを持ってくる。
そもそも外国語をカタカナにすること自体無理があるわけで、
先程の攬雀尾を英語読みで「グラスプ・ザ・バーズ・テール」と発音してもまず通じないと思う。
発音的には「ぐぁーっぷだぶぉーずてお」と言えば通じそうだ。
私は貿易の仕事をしていた関係で、
日本でまだ売られていないアメリカ製品に名称をつけていた。
日本にないものは辞書にもないわけで
それをわかりやすくするためカタカナ読みにする必要があったからだ。
例えば、Rhodiolaというハーブ(植物)があるが、当時は呼び方がなかった。
だからロディオラとカタカナ読みにした。
今ではネットでロディオラとネット検索すれば14万近くヒットするが、当時はひとつも出てこなかった。
それもそのはず、まだ日本にはなかったのだから。
いずれも、
今、日本で一般的に使われている和製英語(カタカナ英語)は最初に誰かが発音しやすく直したものであって、決して英語圏で通じるように直したものではない。
しかもその意味がわかるまで、その言葉の意味すらわからない。
これと同じように先程の攬雀尾をランチュエウェイと棒読みするより
らんじゃくびと呼んだ方が、漢字がぱっと浮かぶし、
感覚的に鳥の尻尾ということがわかる。
意味としては鳥の尻尾を掴んで撫でるような動き、
或いは鳥を抱いて背中から尻尾を撫でるような動き、
どちらにしても、日本語読みの方が直感的に解りやすい。
このように太極拳を始めとする中国武術の名称はとてもユニークだと思う。
日本では動作そのものの意味を名称とする場合が多いが、中国では比喩が使われる。
実は私は比喩が大好き。
感覚的に意味がわかりやすいし、なにより楽しい。
だから、当会ではあえて中国語読みをせず日本語読みにしている。
私が勝手にそうしているわけではなく
当流派ではそのように伝わっているからである。