2021年3月17日水曜日

一式の中に

太極拳は熟練者であればあるほど、套路をゆっくり練ります。
誰かから与えられるわけではなく、自然とゆっくりを求めるようになるという感じでしょうか。

それはきっと「覚える太極拳」から「感じる太極拳」を求めるようになるからだと思います。

覚えるだけの太極拳ならスピードはあまり関係ありません。
しかし感じようとするなら限りなくゆっくりを求めるようになります。

伝統楊式太極拳は全部で85式で成り立っていますが、
85を覚えることから、1式の中の情報をたくさん得たいと思うようになります。

例えば単鞭。
今の自分の単鞭にどれほど満足しているでしょうか?

単鞭には、それに求められる膨大な情報が詰まっており、
更にその用法も無限大にあります。

当て身、崩し技、関節技・・
軽いジャブ程度の技から、死に至らせるまでの恐ろしい殺人技まで、
単鞭には限りない情報が詰まっています。

ここにカツ丼があるとします。
最初はカツ丼がおいしいかどうかを意識すると思います。
しかし徐々に舌が肥えてきて、カツ丼全体のおいしさから、米一粒の味にこだわるようになると思います。

太極拳も同じで、ごはん一粒一粒を吟味したくなるように、一式一式を大切にするようになります。

熟練者であれば起勢ひとつとっても全然動きが違います。
さらに言えば、立ち方からして全然違います。

それはひとつひとつの動作に拘った結果なのです。

漫然と套路を通しているだけでは決してその動きになることはないし、たくさんの宝が詰まっていることにも気づけないでしょう。

太極拳には宝がいっぱい詰まっています。
それを発見できるかどうかは套路の練り方次第です。

普段歩いている道の下にたくさんの宝が埋まっていたとしたらどうでしょう?

今後もっともっとたくさんの宝を見つけるため
毎日ゆっくりゆっくり套路を練っていきたいと思っています。