私が太極拳を始めたのは、太極拳をやりたかったからではありません。
IT革命と言われた2000年、当時私は最先端のビジネスをしていました。
電話とファックスのやりとりをやめ、通信手段をすべてEメールかチャット、掲示板等で行っていました。
グループチャットでミーティングすることを当時はサテライトミーティングと呼んでいました。
商談するために人と会うことをやめ、これらのツールをふんだんに使い自宅から一歩も外に出ず、20年前に年商5000万円を稼ぎ出していました。
今ではYouTube等で高額収入を得ている人もいますが、私は20年前に月収250万円だったこともありました。
別に自慢ではありません。時代に乗ったというだけです。
確かに金銭面では裕福になりました。
友人もたくさんいました。
しかしそれに引き換え大きな問題が発生しました。
腰と肩の激痛と、ひっきりなしに起きる激しい頭痛でした。
それにあれほど良かった視力がどんどん低下し、遠くの物が見えなくなってきました。
更に体力が著しく衰え、5分も歩くと立っていることすら出来なくなり、所構わずその場にしゃがみこんでいました。
ほとんど外に出ずパソコンに向かう時間が増えた結果です。
流石に危機感を感じました。
30代にして80代のような体になってしまったのですから。
それともうひとつあります。
対人恐怖症です。
人と会わなくなったので、人と合うのが怖くなりました。
それまでは毎日100件飛び込み営業し、講習会のゲストとして数百人の前でスピーチもしていました。
その私が、コンビニのレジで目も合わせられないほどになっていました。
さすがにこれではマズいと思いました。
そして同時に思いました。
かつての輝いていた頃の自分を取り戻したいと。
私は自分を取り戻すための方法を探しはじめました。
そして辿り着いたのが公民館の貼ってあった太極拳の張り紙でした。
私はそれを見てすぐに申し込みました。
太極拳がやりたかったわけではありません。
衰えた体力を元に戻したかったのです。
私は良い師に出会いました。
太極拳の型だけではなく、様々な技術や技を教えてくださる素晴らしい師でした。
私はどんどん太極拳に嵌っていきました。
気が付けば、腰痛、肩こり、頭痛も消え、人と接することが楽しくなってきました。
停滞していたビジネスも上向きになり、収入も安定してきました。
どうやら私は自分を取り戻したようです。
私は太極拳と師との出会いに感謝しました。
今でこそ私は太極拳の道場を2つ経営する会の代表になりました。
しかしそうなる8年前までは単なる一生徒でした。
私は太極拳をやりたかったから太極拳をはじめたのではありません。
そして先生になりたいから今の会を起こしたのでありません。
遠く離れた地で教わった師の太極拳を奈良でも一緒に出来る仲間が欲しいという小さな願いがありました。
2~3人でも良かったのです。
共に楊式太極拳をやる仲間が欲しかったのです。
なぜならその楊式太極拳によって私は生まれ変わることが出来たからです。
それを共有し合い共感しあう仲間が欲しかったのです。
その後、私の元に500人近くの人が訪れ、私の太極拳を楽しんでくれました。
師もそのことを心から喜んでくださりました。
人間は歳と共に老化し、体力が衰え、思考力が衰え、そしてたくさんの病気を抱え込むようになります。
私はそれに歯止めをかけたいと思いました。
30代にして80代を経験したからこそその気持ちが強くなったのでしょう。
太極拳を続けてきた今はどうでしょう?
老化が一切怖くないし、それどころか老化が楽しみでもあります。
体力と脳力が低下しても、そのことが逆に好転し、
無の力によって、今までにない大きな力を出すことが出来るようになりました。
太極拳を始めると老化は老化ではなく進化に変わります。
私の体験を読んで頂きどう思われましたか?
歳と共に衰え、何もできなくなる自分を悲観しますか?
それとも進化する自分を歓び、人生を謳歌しますか?
師が教えてくださった太極拳は、若返りの秘法だったのです。