私はこの映画をかなり気に入っているのですが、
生徒にすすめて貸出すると「良かった」と言ってくれる人もいれば、
無反応で返ってくることもあります。
多分この映画の本質や良さに気づけなかったのでしょう。
この映画で監督が伝えたいことは空白になっています。
あえて言わない。
だからこそ考えさせられる。
推手とはそういうものです。
推手はその人の性格が出ます。
相手によっては推手が合わない人もいるでしょう。
しかし続けて行くと次第に合うようになります。
相手を認める。
相手を思いやる。
そんな気持ちが推手力を向上させ、武術としての功夫だけでなく人として成長できるのではないでしょうか?
CGやワイヤーアクション、早回しなどのアクション映画を観て興奮するのもいいですが、
非現実的な映像は心に残りません。
しかしこの映画はずっと心に残ります。
派手なアクションを期待していると裏切られるでしょうが、
「歳をとっても太極拳は強い」というのは亡き兄弟子の言葉ですが、
この映画はまさにそれを描写しています。
歳をとると衰える。
いいえ、太極拳は逆です。
歳をとればとる程強くなれるし
仲間も増え、心が通じ合う人とも出会える。
いわば、人生を最後まで存分に楽しめるということが
この映画を観て私が感じたことです。
最後のラストシーンはなんとも温かい気持ちになれます。
<追伸>
映画の中で「推手」を「結婚」に例えていますが、
私の考察では、「バランスをとって力を使わず相手を倒す」というのは相手を感じるからこそ崩すことができるので、
「相手を理解する」
即ち「認める」ことを「倒す」と表現していると思いました。