2016年8月16日火曜日

推手リレー

当会では套路(型)の練習以外に、気功、基本功、推手、散手を行っているが
約2時間の中にこれだけのメニューを盛り込むのには理由がある。

どれも全て重要であり、
伝統スタイルをそのまま受け継いできているからだ。

10年前と異なり、今は出版物や動画、DVDなども豊富で太極拳を知る機会はいくらでもある。
それで独学する者もいるだろう。

しかし、それで太極拳を本当に学ぶことが出来るだろうか?
私からの答えはNOだ。

太極拳が他の拳法と圧倒的に違うのは化勁があること。
化勁が使えなければそれは太極拳とは言えない。

化勁とは読んで字の如く、化する勁。
即ち、相手の力に逆らわず吸収したり力の方向を変えたりする特殊な技。

化勁で一番解りやすいのは闘牛士の技。
赤い布で突進してくる牛を導き、そしてその力を無力化する。
もし牛とまともに正面衝突すれば一瞬であの世行だろう。

人間もまた体格の差や力の差がある。
この差を埋めてくれるのが化勁。

そしてその化勁を鍛えるためには推手が最高のトレーニング方法となる。

推手も散手も一人では出来ない。
相手が必要。
しかし相手がいればいいか?

実力のないもの同士が行っても推手レベルが上がることはないだろう。

だから当会では推手経験の長い会員さんと
始めてまもない会員さんとペアを組んで推手を行うようにしている。

ところで、今回のタイトルにした推手リレーとは?

それは推手によって、私は太極拳の創始者と推手を行ったことになるということ。

伝統太極拳では必ず推手を行う。
そしてそれによって化勁や発勁方法を体で学ぶ。
この推手が弟子から弟子へと受け継がれ、私のところまで伝わってきたということ。
これは本当に凄いことだと思う。

楊式太極拳の創始者は楊露禅だが、そこから数えると私は7代目というとになる。
わずか5人を介して推手を行ってきたことになる。

これは大変貴重なことであり、お金だけでは決して買えないもの。
私としてはこのリレーを止めたくないと思っている。

先祖を敬うように、創始者への感謝の気持ちがあるから。
私を病気や心の病を救ってくれたのは楊式太極拳だから、楊式太極拳普及のために多大なる力を尽くしてきて頂いた創始者や老師、先生方に心から感謝を述べたい。

そして私のこの感謝の気持ちは決して誰にも消すことはできないだろう。