以前、ある先生に言われたこと
「動画サイトは見ない方がいい」と。
その言葉だけで特に詳しい説明もなかったので
その時は何故だかわからなかった。
動画サイトを見れば、様々な流派の中国武術を美しく演武している動画がたくさんある。
その頃は、単純に美しいと思った。
しかし今はどうだろう?
私の中で見てはいけない動画がある。
そして、動画サイトやSNSなどで投稿されているその武術系の動画を観た時、
私は瞬間的に見ないよう飛ばしたり、非表示にしたりしている。
無論自分から観に行くこともない。
仮にそれが静止画であっても。
理由は実にシンプル。
具合が悪くなるから。
人間本物がわかるようになると、
自然と本物を求めるようになり、
そうでないものに対し拒否反応が起きるようになる。
それは、目から入る情報だけでなく、口、鼻、耳から入る情報も全て。
だから私は常に見るもの、口に入れるもの、空気、
そして接する人も選んでいる。
自分にとってマイナスな影響を及ぼすものには極力触れないようにしている。
自分を守るためだけではない。
それは自分の周りにも伝染するからだ。
周りを変えたいならば自分が変わる。
このことは半世紀生きてきた中で何度も学んできた。
話を戻すが、
先程、見ない動画と言ったが、それは中国武術に限ってのこと。
バレエやフィギュアスケート、体操競技などは好んで観る。
中国武術は武術であって、舞踊や体操ではない。
もちろん人それぞれ好みがあるように、少なくとも私はということ。
実は最近、カンフー映画も受け付けなくなってきた。
子供の頃、カンフーに憧れ、あれだけカッコいいと思ったのに、だ。
今は見てもほとんど熱くなれない。
どうやら私はそれが本物かどうか見分ける力が身に備わってきたよう。
わずかでも早回しが使われているとそれが嘘だとわかってしまい
ほんのわずかでもワイヤーを使うとそれが人間の跳躍力でないことがわかる。
というより、私は元々カンフー映画の中でのワイヤーアクションが好きではない。
映画ファンの方には申し訳ないが・・
それに過剰な効果音も受け付けない。
最近私は形意拳のPVを作って動画サイトに公開したが、
あのPVを編集する時に効果音を入れるかどうか迷った。
様々な効果音を集めてみたが、結果使用を全面却下。
いや、正直言うと一か所だけ入れた。
その理由は暗闇の中で単焦点レンズを使用して撮影したため、
肝心な部分のフォーカスがぶれてしまい、それをうまく繋ぐために止む無くエフェクトと効果音を入れた。
その一か所以外の音は全て本物。
空気を割く音や服がなびく音、地面を叩く音など。
早回しも使ってないし、
ワイヤーなどあるわけもなく、
最後のシーンだけスローモーションを入れた。
実はそのスローですら今は気に入らなくなってきている。
逆に私が今一番見たいもの。
それは師匠の演武。
いや、師匠のオーラ。
そもそも私が美化された武術を受け付けなくなってきたのは
約10年目に再開した師匠の姿を見てから。
もう本当に衝撃的だった。
10年と言う時間差があっただけに尚のことだった。
美しいのではない。
師匠から出ている空気があまりにも凄いのだ。
決して大柄ではない、
どちらかといえば小柄な師匠が動き始めると師匠が大きく膨らんで見える。
その見え方は動画や写真にしても決して写らない。
手を合わせると、師匠の意のままに操られ身動き取れなくなる。
感じるのは手と手というより、空気。
これが本物の楊式太極拳だと思った。
私が最初に出会った師は
本物の楊式太極拳を教えてくださる方だった。
なんと私は恵まれているのだろう。
この縁を宝とし、後世に伝えて行きたいと思った。