楊式太極拳で使う力はごくわずか。
どんなに繰り返し技の練習を繰り返しても息が切れることはない。
それほど力を使っていないということ。
時折、想像する。
もし、物凄いパワーで攻撃してくる相手に本気で楊式太極拳の技を掛けたらどうなるだろうと。
考えただけでも恐ろしい。
相手の力が強ければ強いほど与えるダメージは大きくなり、
下手をすれば命を落とすことになりかねないと。
楊式太極拳の恐ろしいのは打つ力ではない。
化す力。
消える力とも解釈できる。
空中戦で敵機に後ろに付かれた時、右へ左へと攻撃を交わしながら十分誘い込み、
崖壁等の直前で一気に急上昇し、追尾してきた敵機は崖に激突なんてシーンが良くあるが、
あれに似ている。
これと同じく楊式太極拳は決して闘わない。
許す、導く、化す
相手にとっては自分のしたことが自分に返るだけ。
だから散手の稽古の時は決して突きを早く打ち出さないようにと指導している。
それに、楊式太極拳の技のパワーを抑えるためには、力を抜くのではなく逆に力を入れなくてはならない。
力を抜くと危険度が増し、
逆に相手を守るために力を入れなくてはならない。
相手が危ない方向に飛んでいかないように力で支えたり、
相手が転落しないように手を握って支えたり。
だから
楊式太極拳では無力こそ強力となる。